2015-07-25 08:39 | カテゴリ:ねっと・げーむ
9-1:賊に生きる者

 だらだらとしたアスガルド生活が続く。親睦ギルドの雰囲気が温いこともあったが、
何よりあの頃は目的がなくなってただ突っ立っている時間が多かったことも原因だった。
普通の人ならば飽きたら引退し案インストールするだろうが、やることはなくてもログインだけはしていた。
これはどうやら廃人の証らしい。ライトユーザーを自負する方々もこの症状があるなら要注意だ。
自分から狩に皆を誘うようなことも、たまに気が向いたらMCや異次元へカオス狩りに連れて行く程度だった。
その頃からギルド自体もログイン数が減ってきたこともあり、静かになりつつあった。
そんな中でも毎日ログインしていた女性アバターの修道士と阿修羅がいた。
修道士はライトユーザーで私とチャットをして過ごす時間が多かった。
狩りは誘われれば行くと言った感じで実質のサブマスのような存在だった。
阿修羅のほうは毎日せっせとレベリングをがんばっているで、チャットには参加するものの
たまり場で見かけることは珍しかった覚えがある。阿修羅と私は最初そこまで面識はなかった。
吟の相棒を持つ彼女とはPTを組む機会が少なかったからだ。
転機が訪れたのは彼女の善悪レベルが41に到達したことだった。
ルミナーに狩りに行くと言うことで、同じレベル帯にあったシャニーに狩りのお誘いがあったのだ。
新しい場所(とは言っても実装自体からはかなり時間が経っていたが・・・。)や
コミュニティへ赴くのはなかなか腰が重い悪い癖のおかげで
未だにルミナーに足を踏み入れたことがなかった私だったが、
せっかくのチャンスだと思って参加してみることにした。
私含め6人くらいの人数で懺悔の間で狩ることに。とにかく初対面の人ばかりなので
いつも以上に気と知識を絞って狩りをしていたらしい。狩が終わった後、まさかのこと起きた。
なんと狩中の動きを評価されたのである。
PTに参加して褒めの言葉をもらったことなど初めてで(ドS吟からのスパルタで罵声ばかり浴びていたせい)、
私にとっては普通の動きだったはずなので余計に驚いた。
その褒め方が妙に深い語り方だったのでよく聞いてみると、阿修羅は実はサブでメインは盗賊らしい。
同じ盗賊に生きる者からもらった言葉なら喜びも一入である。
その日からほぼ毎日彼女らとルミナー神殿に通い、いつの間にか帰るときも分かれずに
彼女らのたまり場であるルアスにそのまま記憶の書で帰るようになっていた。
これがアスガルドの中における大きな転機の一つである。
たとえるならば、それまでうだつの上がらなかった平社員が突然海外でのビックプロジェクトに引き抜かれたような、
それほどの転機であった。

9-2:ヘルシオン

 ハイレベルな狩場で遊ぶようになり、ますます装備の必要性が増してきた。
PTではルミナーやリヒネへ突撃し、暇さえあれば指輪狩りをするという毎日が続く。
そんな中で広がっていったのは交友関係だった。
私自身は特にそれまでと行動パターンを変えたわけではなかったのだが、
知り合った賊さんがなかなか顔の広い人だったらしく、
今まで名前しか知らなかった有名人と一緒に遊ぶこともよくあった。
海賊要塞でひたすらカメを叩いていた時代に、
こんな有名人たちと自分が一緒に遊ぶ姿など欠片も想像したことはなかった。
彼らは雲の上の存在で、交わることなどあるわけもないと思っていたのだが、
まさか知り合って一緒に狩をする機会が訪れるなど、ずいぶんとシャニーも強くなったものである。
もちろんそんな人たちが行く場所は私にとってどこも未知の領域だったことは言うまでもない。
その一つがヘルシオンであった。ヘルシオン自体は何度も行ったことがあったが、
鏡の女王の討伐には52人PT時代にお情けで一回参加させてもらっただけだ。
あの時はそこに立つなだのなんだの言われた、いわゆる立ち位置でドロップが決まる謎仕様の時代だった。
それ以来ご無沙汰で存在すら忘れていたのだが、ある日突然賊さんにこう言われた。

「この服使わないから着るといい」

渡された服は見たこともないような服だ。それまで蒼い潜入服がトレードマークだったシャニーだったが、
もらった服に袖を通した途端見た目が豹変した。黒を基調とした服は明らかな堕天を主張し、
それを証明するかのように二対の翼は漆黒に染まっていた。
そう、それは言わずもがなディジェレイドブラウスだった。それが高価なものだとすぐ分かったし、
今までの賊の印象とまるで違う雰囲気に私はそれを普段着にすることに決めた。
そして、この服をアップグレードできるということを聞いた私はふと、
討伐PTに参加してみたいと言ってみると賊さんは快く了解してくれ、
爆弾係として参加させてもらえることになった。ありがたいことである。
当時は賊など一人しか参加できない状態だった。ダガーだろうが鞭だろうが、
制限時間のある中で賊の火力はお荷物になるので爆弾の成功率のみが賊の評価対象だったからだ。
彼女は阿修羅で参加し、私は盗賊か吟遊詩人で参加したこともあった。
今でも覚えている。私が吟遊詩人で参加したとき、当時大暴れしていた某魔術師が
何らかの手法で討伐フィールドに乱入し、敵対状態の戦闘ギルドのメンバーを吹き飛ばして帰っていったことがあった。
雑魚の殲滅係の魔がやられ、聖として参加していた賊さんの相方もやられ、残っていた聖さんも一人落ちて・・・
聖1吟1魔1という過酷な状態になったことがあった。インクリ・スローが切れたら魔が蒸発する。
サポセフバトソンが切れたら制限時間に間に合わない。
そんなぎりぎりの状態を何とかやりきったあの達成感と安堵感は思い出の一つである。
これもきっとあの超絶吟にスパルタでしごかれたおかげである。
何度か通っているうちにアップグレード用の素材を入手し、普段着はティアレイドブラウスになった。
それはロオからイアに渡っても、地下の竜服を手に入れるまで愛用することになる。

9-3:デルクレビス

 女王討伐PTを通して、サーバーの上位層と交流が生まれはじめてしばらくしてから、
アスガルドは最後の大型アップデートとなるレベル100以上の専用マップが実装された。
レベル100を達成するためにあまりにも大量の素材を収集しなければらない手間から
課金を選択する人が大半だったのではないだろうか。まったく、さすが商売人である。
社会人となっていた私も例に漏れず、課金を使ってあっさりとクエストは終わらせた。
しかし、そこからが苦難と言うか、シャニーでプレイしていて初めて、
これは無理だという状況に追い込まれることになる。まず、DEX200ではほとんど避けることができなかった。
ダガー賊ならいい。鞭賊で回避ができないということは、もうタイマン以外に狩れる手段がないことになる。
ウェブとラウンドを駆使して雑魚相手に必死狩りをするも、経験値バーは全く上がっていかない。
この時点で鞭賊の限界を感じ、ソロではデルクレビスに訪れることは長い間止めることになる。
その間何をしていたかと言えば、また装備のレベルアップに注力していた。
幸い、知り合いの賊さんが参加しているデルクレビスPTに参加させてもらうことで
レベルを上げることはできていたため、空いている時間はとにかく装備の充実に充てることにした。
正直鞭ではどれだけ装備を充実させても限界があることは分かっていた。
実際、PTに参加する時は鞭ではなくダガーと盾を持って釣りと爆弾を投げることに終始し、
とにかく圧死しないことだけに注意を注いでいた。行動パターンはヘルシオンの延長だったため違和感はなかったが、
ここが主戦場となるのでは賊に未来はないとさえ思っていし、おそらく現実鞭賊にとってはそうだっただろう。
DEX250でさえも回避は困難だったのだから。そこまでDEXをあげると頑張ってもSTRは70程度が限界だ。
鉄のムチの攻撃力では、まるで足らないタフネスを、地下の修羅たちは備えていた。
しまいには戦耳を捨て、吟のHP耳を装備したりとにかくHPとDEXだけに特化させて
必死にレベル105までの道のりを耐え忍ぶこととなる。まさに前衛としてのプライドなどあろうはずもなく、
土下座してでも生き延びるような、もはや拳王の名など要らぬと言った状態である。
毎日毎日、インベントリは指輪か爆弾でいっぱい。耐えられたのは、その先に一筋の希望があったからだった。
今はただ、その瞬間のために己を鍛えるしかない。

9-4:鞭との別れ

 社会人にもかかわらず深夜2時くらいまで続く苦行のような狩りに堪え抜き、
先に知り合いの賊さんがレベル105に到達した。祝福も適当に彼女は早速手に入れておいたスキルを習得する。
それはもちろん言わずと知れた盗賊の最強スキル、ファントムグラインドだった。
戦士さえをも凌駕する攻撃力に加えてクイポ可の間違いなく最強の一角であり、
それまで中衛と言うポジショニングだった盗賊を一躍ダメージソースへと変えたスキルであった。
さっそく狩で使って見せた彼女の叩き出すダメージに唖然とさせられた。
まだスキルレベル1だと言うのに、私の鞭をすでに抜き去ろうと言う火力だったのである。
俄然105へのモチベーションが湧きあがった反面、不安もあった。
ダガーから離れて数年が経つ。ずっと鞭賊で通してきた自分をあっさり捨て去ってしまうことへの躊躇い。
だが今はまず105になろうとそれから数日PTに参加し、無事105に到達することができた。

 しかし、ここで思わぬ足止めを食らうことになる。
実はこのファントムグラインド、とんでもなくレア度の高いスキルだったのである。
ドロップ先がドロップ先であったこともあり、なかなか出回らなかった。
自力で取りに行こうとしたものの、クリティカルの出ない鞭賊などただのカスである。
狩っているのか狩られているのかまるで分らない状況でレアを狙えるはずもない。
毎日募集記事を出しながら彷徨う日が続いた。出ない・・・記事にも反応はない・・・時間だけが過ぎていく。
105になってからすでに数週間が経ち、レベルも106になってしまっていった。
それでも、音沙汰なしだったのである。ついに知り合いの賊さんが手伝ってくれるようになり、
自力ドロップを本気で狙い始めた。一緒に狩っていると横で繰り出される強烈な一撃は羨望の的。
2週間くらいがんばっていただろうか。モチベーション的にはだいぶ落ちていた。
もう、露店で売っているファントムジャベリンがファントムグラインドに見えたり、
カップ焼きそばを作るにもかやくと一緒にソースをぶちまけたりと、意識が別の場所にあった。

 そんなある日、倉庫の整理をしているふとインベントリの片隅に見慣れないアイテムがあることに気付く。
アイテムボーナス・・・おそらくガチャを回した時の景品だが、
使わない手はないとシャニーに持たせてティルオ4へ仲間と共に今日も向った。

「こんなカスポーしょん」

私だって思っていたことを知り合いの賊さんが口にした。
使っているほうがむしろ出ないのではないかと思うほどに効果に信憑性のない
アスガルドのアイテムドロップ率上昇系のアイテム。だが、
この時はまさに藁にもすがる思いだった。この90分でダメならもう諦めよう。
そんなことまで考えながら黙々と狩った。するとそこで奇跡は起きた。

― ○○さんがファントムグラインドを手に入れました

まさか・・・しかし、仲間たちが騒いでいる。ログを見上げてみる。
やっぱりその文字がある。― ファントムグラインド ― ついに、ついに手に入ったのである。
私へのドロップではなかったが、躊躇うことなく私に放り込んでくれ私もすぐ覚えて狩を再開した。
奇跡はそれだけでは終わらなかった。何とブーストモラルまでドロップしたのである。
この日は最高にツイていた。嬉しい、それ以上の感覚はなかったが、
同じくらい感じたことはこれから新しい盗賊の時代が幕を開けるのだと言う直感。
確かにまだクリティカルは出ないが、それまでの盗賊とは明らかに違う力を持った盗賊がそこにはいた。
あのときの頭の先からつま先までぞくぞくする感覚は忘れられない思い出となった。
当時ファントム賊は希少価値が高く、同じギルドや女王討伐PTにファントム賊が二人もいる、
というのはなかなか珍しがられたものである。
スポンサーサイト



2015-07-20 00:05 | カテゴリ:タイ赴任記
会社の健康診断でシラチャのサミティヴェート病院へ行ってきました。
通訳なしで一人で突撃したので苦戦するだろうなと思っていましたが、やっぱりついていきなり大苦戦!
まず院内マップがない!どこへ行けばいいかまるでわからぬぁい!

でも、日本人がぶらぶらフラフラとアヤシイ行動を繰り返していたら
受付のお姉ちゃんが寄ってきて、ニホンジンデスカ?と聞いてくれた。助かる!

IMG_0125_20150718190744e04.jpg

案内されたエレベーターでそのお姉ちゃんとはさようなら。
でも、エレベーターにこんなシールが。日本人隔離専用の階があるとは、
なるほど日本人比率が非常に高いシラチャならではである。

IMG_0127.jpg

12階についてびっくり。なんだこの充実した施設はー!!
まるで日本にいるのと何ら変わらないほどの清潔感と近代的なフォームはしばし私を呆然とさせた。

IMG_0126.jpg

受付にもご丁寧に、日本人専用相談カウンターと日本語で書かれている。
今まで片田舎ラヨーンで暮らしてきた私にとっては、まるで異世界に来たような感覚だった。

IMG_0129.jpg

外の眺めもまた格別。
入院した駐在員があまりの居心地の良さに退院を拒んだという逸話があるのも頷ける。

IMG_0130.jpg

病院のキャンティーンで出た朝食。また出た、生卵。
だけど病院だし大丈夫だろうと全部平らげました。
味はまぁ、良くも悪くも病院の食事です。ちょっと喰い足りねェな・・・。

健康診断の結果はもちろん、ぬぁ~んの問題もなし。
ただ、正常範囲内とは言えコレステロールに気を付けろと。
気を付けろって何に気を付ければいいかと聞いたら、イカやカニ、エビの過摂取に気を付けろのこと。
なるほど、タイは何かと料理にエビ、カニ、イカが入り、ほぼ毎日食べている気がする。
これは気を付けないといけないなと思わされた健康診断でした。
2015-07-19 00:05 | カテゴリ:タイ赴任記
タイと言えば、アナタは何を想像するだろう。
やはり数々のお寺や像使いだろうか?

IMG_0112_2015071818294492a.jpg

こういう景色も南国ならではだろう。
突き刺すような太陽、濃い緑、高い空、白い雲・・・まさにタイであるその反面・・・

IMG_0131.jpg

とんでもない矢のような雨が突然に降ることも茶飯事。
この時なんかは大停電までしたものだから本気で夕飯が危ぶまれた。

IMG_2057.jpg

私が一番困るのは水である。
これ、紅茶とちゃいますねん。れっきとした緑茶なんですわ。
緑色じゃないですけど、緑茶なんです。ええ、変色してしまうんです。
タイの水は硬水が大半で、軟水ちっくな水で入れてもこのありさまなのです。
二番茶は夜越しでなくてももーダメですわ。

IMG_2097.jpg

タイも日本同様、食は多国籍化が進んでいる模様。
タイに来たんだからタイ飯を喰え!喰って喰って喰いまくれ!
そんな日々もいいですが、たまには違うものも喰ってみたい、それができる環境です。
写真はコリアン料理店の石焼ビビンバ。こっちで生卵乗ってくるとうぐっと感じますが、無事生きております。
それにしてもこちらで残念なのは、アッツアツがないこと。
冷たいことが最高のおもてなしと言う価値観の国ではアツアツはダメなのかもしれん。
けど、麺は百歩譲っても・・・石焼ビビンバまでアツアツじゃなかったらアブないと思うんだけどねえ。

IMG_0132.jpg

ホテルでもこんな風にあれこれ催しごとをやっているようです。
行ったことはないですが、パンケーキとかは食べてみたいなぁ。行く時間がなかなか取れないんですよね。
2015-07-18 18:16 | カテゴリ:タイ赴任記
今日は何事もなく平和に終わっていくはずだった。
定時になると申し合わせたように動き出すタイ人たち。
彼らは帰宅用のマイクロバスに乗り遅れないように定時で帰っていくのだ。
まるでバーゲンのような騒がしさが過ぎると、もうそこはひっそりとした空間がたたずむ。

ところが、今日は残っている人がいた。私ではない。
私はいつも定時内はタイ人と仕事をし、
定時後に自分の仕事を始めるのでこの時間は第二の始業時間と言ってもいい。
残っていたのは同セクションのタイ人マネージャーである。

いつも私が帰る時間はだいたい決まっている。その時間までに帰らないとフィットネスに間に合わないと言う時間だ。
その時間になってもマネージャーはいた。そして彼女は今日の夕飯の予定を聞いてきた。

「センレックやバーミーが食べいたいんだけど、タイ人は夜麺を食べないんでしょ?」

そう聞いたら彼女は首を横に振った。こう教えてくれたのはいつも彼女の横に座っている
人事課のタイ人マネージャーである。あのヤロー、またテケトーなこと教えやがってと思ったが
よくよく聞いてみると、家族持ちは家で料理を作るから屋台の麺屋にはいかないという意味らしい。
・・・それ麺に限らず屋台モン全部じゃねーか!!!11
あ、こんなことはこっちではしょっちゅうです。これで怒ってたら3日と持ちませんって。

んで、知らないうちにマネージャーが誰かに電話をしている。
私の専属のドライバー相手のようだ。横に通訳の子がいたので聞いてみると、
どうやら夜も営業しているここらでは一番おいしい麺屋に行くようにドライバーに伝えているらしい。
むちゃくちゃローカルなお店らしく、私は一枚の紙切れを渡されて会社を出た。

IMG_2100.jpg

 降ろされた場所からドライバーが指をさす。
その先にあった店を見てかなりの激闘を覚悟しなければならなかった。
早速注文してみると、奥で座れとジェスチャーされ、奥を見れば確かにうまい店なのかほぼ満員。
ローカル集たっぷりの小ぶりで小汚い店は蛍光灯が弱り目に見えて光がぶれている。
こちらの武器は会社で握らされて紙切れ一枚のみ。
なんとか紙切れと身振り手振りで戦っていると、心配してドライバーも加勢してくれた。これで勝つる!!11

IMG_2095.jpg

紙にピゼットと書かれていたため、スペシャルタイプが出てきた。
オリジナルはやや甘めだが、備え置きの唐辛子との相性は抜群。なるほど、流行るわけである。
これならまた来てもいいなと思わせる味だった。

IMG_2096.jpg

場所はどう説明していいだろう。ロータスのすぐ近く。スターセンターの中にある。
良い場所を教えてもらえた嬉しさ以上に、ローカルが気を許してくれていることが何ともありがたい。
彼女らにも今度日本に一時帰国したら何か買ってきてあげないといけないな。
2015-07-17 08:55 | カテゴリ:ねっと・げーむ
8-1:おかえりなさい。マイソシアは537日経過しています

 福島地震によるサーバー閉鎖という大きな転機がなかった時期も、
ちょくちょくマイソシアからお暇して別ゲームで遊んでいたことがあった。
どれだけのゲームを経験しただろうか。古いところからだと、テイルズオブエターニアオンラインやら、
エミルクロニクルオンライン、ノーステイルにマスターオブエピック、そしてマビノギ。
ローズオンラインもインストールはしたな。タイに来てクソゴミ回線になったので
マビノギのようなタイミングシビアなゲームはできなくなった今はエミルクロニクルをやっている。
ベータの頃軍艦島でちょろっと遊んだだけだったが、
キャラクターデリートがされていないのか名前が残っているようだ。
もちろん、パスワードなど覚えていないから新規にアカウントを作り、
お尻服を目指して寂しくソロをしているところである。それにしてもこのゲーム、
コミュニティにどう参加していいのかまるで分からない。ギルドの募集記事がないのだ。

 話が若干逸れたが、長い間ネクソン全体でサーバー閉鎖が起きた関係で
私は別のゲームを避難先に探していた。その時に出会ったがマスターオブエピックであった。
正直、動きがもっさりしていたしキャラクターポリゴンが好みでなかったので
そこまでハマれるゲームではなかったが、このゲームでしばらく時間を潰し、
サーバー開放を機にすぐにアスガルドに戻ることはせずに今度はマビノギに手を出した。
そこで弓にハマってしまい、かなり長い間弓士としてエルフをプレイしていた。
今は物理さっぱりなドルイドになっているが、あの頃はアスガルドになかった弓と言う武器が新鮮だった。
マビノギではいたって普通の一般人として暮らしていた。演じていたわけではなく、
当時はアスと違って数回殴られただけでやられてしまうシステムだったからバカができなかったのだ。
今は紙エルフでさえエリートで胴上げされ続けても死ぬことはない無類のタフネスを手に入れたが・・・。
そんな感じでマビノギをプレイしていた時、ふと、ふとアスガルドをプレイしたくなった。
別ゲームをやっていると遅かれ早かれ必ずこういう時期が来る。
飽きて離れたはずなのに、なぜか戻ってしまう。かなり長い基本構成ダウンロードを終え、
再びマイソシアに戻ったのは最終ログアウトから537日後のことだった。

8-2:平凡生活

 アスガルドに戻った私は思わず息を呑んだ。あまりにも・・・人が少ないのである。
やはり私と同じようにサーバー閉鎖を機に他のゲームへ避難し、
そのまま移住した者も少なくなかったようである。ミルレスはもともと人が少ないひっそりした町だっおたが、
まさか帝都ルアスにまでも過疎の影響が顕著になっているとは予想もしていなかったし、
この時初めて、アスガルドの終焉と言う言葉が脳裏をよぎった。
かつてのカスの集い場であったルアス北東の民家やミルレス宿屋を回ってみたが彼らの姿はなく、
またフレンド0からのリスタートだ。だが、マビノギで多くのギルドを渡り歩いてきたので
ギルド加入募集は慣れたものだった。復帰その日のうちにギルドに加入することになる。
だが、加入はシャニーではなく、サブの善賊で行うことにした。
それでも、サブも善悪71まで上がっていたのでギルドメンバーとは大きくキャラスペックに開きがあり、
多くの時間は狩りよりもチャットで過ごすことが多かった。
しばらくして善賊だけでなくシャニーも親睦ギルドに加入させたもののやっぱりソロが多く、
火山洞窟でせっせとレベル99を目指して鞭でゴブリンをしばき倒す日々が続いた。
カス所属のころに比べればあまりにも刺激のない平凡な時間だったし、
やっぱりギルメンと遊びたい、そんな気持ちが私に新規にキャラクターを作る選択をさせる。
キャラクター選択画面に行き、容姿は適当に決め、名前は・・・
その時ちょうど喉が渇いておりドールのジュースを飲みたかったためとろぴかーなに決定。
職業は魔術師を選択し、しばらくソロをした後、ギルメンと火山やMCに行く時間が増えた。
もちろん目指すは吟遊詩人である。PTで遊ぶにはやっぱり後衛に限る。

8-3:メインが詩人と呼ばれる時代

 吟遊詩人になるまではやっぱりかなりゆっくりとした時間が流れていた。
戦闘ガチ勢がいないギルドだったため、なんともぬるい狩をちょっとやるだけだ。
カスでのカオスな狩を体が覚えてしまっているためどうにも物足りない。
味の薄い料理に醤油だのケチャップだのかけてそれでも足らず、唐辛子をまぶし始めるようなものだ。
そこまでやるとさすがにギルメンが飛び上がってヒイヒイ言い出すので加減が何とも難しかった覚えがある。
ソロは全くと言っていいほどやらなかった、というより、できなかった。
詩人を最初から目指していたため、装備も詩人向けに揃えていたためまるで火力が足らないのだ。
晩年は全WISに無駄を感じINTにもかなり振った詩人で遊んでいたが、
当時は全WIS以外眼中になかった。そんな長い魔術師時代を終えてようやく詩人になると、
やっぱりまたゆっくりとした時間が流れはじめた。マスターも後衛であったし、
彼女は別ギルドと遊びに行くことも多かったのでサブマスの修さんとよく絡んだものである。
それでもたらたらとレベルを上げ、71服に袖を通したのは魔術師を作ってから1年くらい経過していたと思う。
バトソンを覚えると一気にPTで遊ぶ機会も増え、火山や氷の城だけでなくあちこち連れ出されたものである。
スパルタされた経験は錆びついておらず、MC1~3はまさに当時の私にとっては遊園地のようなものだった。
前衛たちがびびってDRやDMに突っ込まない時は私が突っ込んでいったくらいだ。
もちろん、後から慌てて前衛が追ってくることになり、よく壊滅しかけた。
私は暗黒攻撃を無効化するデュアルディバインカミュベルトを持っているので大丈夫・・・と思いきや、
アスを離れている間にどうやら仕様変更がったらしく、
4億もしたベルトがただのゴミになっていて本気で何度も壊滅しかけたが、
師匠からは死ぬ吟はカス吟だと何度も言われていたためどんな手段を使っても粘りまくった。
前衛の範囲攻撃に巻き込むことなど当たり前で、
皆から離れて一人でモンスターを殴っている前衛を見捨てることも何の躊躇いもなくなっていた。
もちろんギルメンにとっては、私は狩場で混沌を呼び込むカオスバード扱いになっていたし、
ギルメンの誰に聞いても私のメインは吟遊詩人だと言われるほどに、詩人でのプレイ時間が長かった。
そして何より感じだ。もう、ベータ時代から残っていて私を知る人は、アスガルドの中にそう多くはないのだと。
ほっとしたような、少しもの悲しいような。そんな気分で精いっぱい狩を祭に仕立てる毎日が続いた。

8-4:阿修羅の実装

 ついに詩人も98レベルにまで到達し、狩りの機会がだいぶ減っていった。
当時はまだデルクレビスは存在しておらず、レベルが99になったら、
あとは天上界でのマゾいプレイをお楽しみくださいと言う流れだったのだが、
はっきり言って天上界はプレイしていると眠くなるのであまり好きではなかった。
特に善神界のクシュロンは寝ろと言われているようなものだった。
シャニーの善悪を41まで上げた時かなりしんどい思いをしていたから、
詩人で行こうなんてとても思える場所ではなかった。適当なダンジョンに籠り、
コンフュージョンのスキルレベルアップを図る毎日もまたやはり眠く、寝落ち率が跳ね上がった。
この時から、PCを付けっぱなしでお布団に突っ込んで寝落ちしようが何とも思わなくなっていった気がする。
ギルドでも、こいつが静かな時は寝ているという暗黙の理解が形成され、
よくゴミでインベントリが一杯なっていることがあった。
それを処理する過程で何か大切なものまで捨てた気がするがもう覚えていない。それくらい寝ぼけていた。
ちまたでは阿修羅が実装されて廃人たちが我先にとテストサーバーでの性能との比較をしようと転職していったが、
私はそんな様子を遠巻きに眺めていつも通りチャットをしていた。
私には新しいものが出てきてもすぐに飛びつかないで様子を見る悪いくせがある。
そのおかげで初期のバグやらトラブルには遭遇しないで済むのだが、
たいていうまい目を見るのは先手を取って商いを始める連中なのでもらいも少ない。
何より、動きのトロい前衛なんぞとてもじゃないがやっていられないという職業病のおかげで
他の前衛にまったく興味が持てなくなってしまっていた。
この頃から阿修羅と修道士が前衛の中でも双頭を為すようになり、
それまで確固たる地位を築いていた戦士たちが発狂し始めた気がする。
騎士はまぁ・・・うん、ブレのない安定路線だったな、最後まで。
そんなとき、親睦ギルドにとある人物が加入してきた。その人も阿修羅をやっていた人のようで、
最初はまた阿修羅か、とくらいにしか思ってもおらず全然交流のない人物だった。
それがその後の私のアスガルド生活を一変させる人だったとは、この時夢にも思っていなかった。
2015-07-09 08:45 | カテゴリ:ねっと・げーむ
7-1:ギルド放浪

 しばらくログインしても何もしない日が続いたが、
やっぱり何かしたいし一人でポツンといると何をやっているのか分からなくなってくる。
すでに事件からかなりの時間が過ぎ、もうシャニーと言う名前が晒しスレに出ること自体がなくなった。
その頃から、やっぱり誰かと遊びたいというMMOをやっているなら当たり前の気持ちが前に出てくるようになった。
F2を開いてみる。するとかなりたくさんのギルドが乱立しているようで、
一頁がギルド加入募集の記事だけで埋まっていることだってざらだった。
もう大分ギルドから離れているし、PT狩りもロクにしたことがないのでついていけるだろうか。
そんな不安を抱きながらもギルド加入の募集主にWISを送ってみる。
案外、加入する時はあっさりだがギルドによってその表情は何ともさまざまだった。
いきなり新入生歓迎と狩りにつれて行かれることも多かったし、
中には挨拶しても無言の葬式場のようなギルドもあった。狩場に連れ出されるのも、
皆が楽しめるレベル帯の場所に行くギルドと、さっさと自分たちと遊べるレベル帯まで養殖しようとするギルドなど様々だ。
だが、たいていどこのギルドもその最初の一回限りで、多くは天上へ行ったり、
レア狙いのボス狩りで溜まり場に顔を出すことさえなかったりと、やはりレベル帯の違いは大きな隔たりとなった。
同じレベル帯で遊べる人が多いギルドはどこか・・・しばらくギルドに加入しては脱退する生活を繰り返し、
ころころ看板が変わる流浪の生活を続けることになる。多くのギルドはルアスが拠点であったが、
なかなか仲の良い知り合いができなかったのでやはり大半ミルレスにいた気がする。
同レベル帯の子と仲良くなっても、やはりその子も出て行ってしまうのだ。
理由は恐らく、私と同じだったのではないだろうか。大勢の中の孤独と言うのは、
ある意味単身の時よりも居心地が悪いものだ。そりゃあレベル70台と90過ぎて天上レベルあげなきゃのレベル勢では、
辛みがあるほうが珍しいのは分かる。ゲームであって仕事でないのだから、
ギルドマスターだからと言ってそこまで面倒は見ていられない。だが、ギルドマスターの面倒見の良し悪しはギルドの盛況閑古に直結することを知るいい経験になった。たいていが小規模から抜け出せないのは、
ギルドマスターの目が届く限界があるということなのだろう。有名ギルドや大所帯ギルドも、
実情はギルドマスターと特に仲の良いメンバー数名が中心で、他は顔を見たこともない、
喋っているところさえ見たことがないといういわば幽霊メンバーが多かった。
わいわい仲良くやるなら、小規模ギルドに限る。それが私の中で見つかったギルド選びのひとつのポイントだった。
そして、ある日それまで見たことのなかったギルドがF2に募集記事を上げているのを見つける。
おまけに、他のギルドは丁寧な書き方が多いことに対し、このギルドは何か妙に馴れ馴れしいというか、
独特の雰囲気を持った書き方をしていた。何だろう、言葉では言い表せないような好奇心と期待が、
募集主へのWISを躊躇わせなかった。

7-2:自由な人たち

 ギルドに入った途端、私はきょとんとしてしまった。
もしかしたら、私はとんでもない異次元に迷い込んでしまったのかもしれないと。
ギルドの人数自体は少なかったのだが、右を見ても左を見ても、とにかく濃い連中が集まっていた。
既にレベル99に達し、やりたいことはやり終えて今は隠居を決め込む元ド廃人。
メモで卑猥な言葉をギルドへ発信しながらなぜか笑える騎士。常に芝を生やしている修道士。
そして、話し方から行動までとにかく型に囚われないカオスバード。
どいつもこいつも自由人過ぎて、こんなギルドでついていけるのだろうかと不安ばかりがよぎったものである。
いわゆる普通の、悪い言い方をすれば型通りの面白げもない形式典範を取り入れるギルドならば、
加入して最初はだいたいこんな感じだろう。

「加入しました○○です。どうぞよろしくー」
「よろ^^」

だが、このギルドは違った。こちらが挨拶を始めるまでもなく既に勝手に盛り上がっている。
ギルド加入をしてくれた吟が「たまり場にいくお」とPTに誘ってきて記憶の書でワープ。

「おにゃのこが加入したお!」
「かわゆすwww」

何か秘境の部族に捕まって村まで連れてこられたような気持である。
逃げ出すわけには行かないが、この会話だけでも分かる。
こいつらは今まで関わってきた人間とはまるで違う世界を生きている者なのだと。

「おれが釣ったんだぞ、褒めろおっおっ」

新規で加入しただけでこの盛り上がりである。彼らはすぐに私をMCへ連れて行った。
だが、彼らが連れて行ったのは養殖の聖地MC4ではなく、MC2だった。
適当な場所を見つけると、皆申し合せたかのように散っていく。
しばらく訳も分からずぽけえとしていると、皆画面いっぱいにわんさか釣ってきたではないか!
それをDPHで一気にビースを割って、辺りは何が何だか分からなくなっていく。
もちろんスマイルマンやらデスペラが湧きだして支援守護を持っていなかった私は一気に蒸発してしまった。

「カス子だなぁ」

死んだかと思うと即コマリクが飛んでくる。早い、早すぎる。とにかく生き残ることに必死だった狩だが、
今までとは明らかに違う手に汗握る狩は強烈に印象に残った。
しかし、彼らによる洗脳作戦はまだまだほんの入り口だったのは言うまでもない。

7-3:おにゃのこ

 とにかくやることなすこと全てが規格外の連中ばかりで、
まさにどっかのギャグ漫画の世界にそのまま飛び込んだかのような毎日だった。
だが、彼らのプレイヤースキルは間違いなく上位を行くもので、特に吟遊詩人については後から知ったことだが、
その腕前はサーバーでも名の知れた人物だったようである。
だが、彼女にとってはそれが普通なので、こっちがついていけなければあれこれと酷いことを言われたものである。

「カス子だなぁ」
「何で死んでんの!!!11」
「ぱんちゅ臭いお」

この語調でなんとなくぴんときた方もいるかもしれないが、
このブログでたびたび登場していた痛い吟遊詩人の元ネタは実は彼女だった。
別に誇張したわけではない、毎日本当にあんな感じだったのだ。それでも根はやさしい良い奴で、
他の連中も言動はバカを演じていたものの気持ちの良い人ばかりだった覚えがある。
少なくとも、ギルドメンバーの陰口を言いあう派閥のある大手ギルドより遙かに居心地の良い世界だった。
この頃から、私も朱に染まり目に見えて痛くなっていった気もするが、まぁ才能が開花しただけなのだろう。

 それにしても、詩人の彼女の腕前は毎回すごいものだった。
どんな大ピンチでも死ぬことはなく、彼女がいればどこでも行ける、そんな抜群の安定感があった。
彼女を見ているうちにふと口にしてしまったことが運の尽きであった。

「おれも吟やってみたいな」
「¥w¥」

祭が大好きな連中である。こんな燃料を見つけて担がないわけがない。
さっそくたまり場にいる連中だけではなく、ギルドチャットで呼びかけが始まる。

「吟やるってお!!」
「名前なんにすんの。kwsk!」

普通のギルドなら、誰かが別をつくると言ってもこんな風に盛り上がるのは少ないだろう。

「うーん、名前どうしようか」

そんな風に言ったのがまた彼らにとっては絶好の燃料だ。
「じゃあみんなで決めようぜww」吟の提案にまわりも興奮し始める。やっぱりこのギルドは面白いギルドだ。
そんな彼らがどんな名前を思いつくのか楽しみで、その場のノリに任せてみることにした。

「おにゃのこ」

まさかの全員一致の名前だった。正直最初は何が起きたんだと思ったが、
すぐに私はキャラクター選択画面へと向かっていた。おそらく一昔前の私なら拒否っていたかもしれない。
明らかにその名前だけで痛い奴認定されるのは間違いない。
しかし、すでに一度晒されているし、こんな濃い連中の中にあってはIDだけではまだ印象は薄い。
すぐに女の子の魔を作りたまり場へ戻る。名前はもちろん・・・

― おにゃのこ

「マジで作ってきたおwww」

もう、溜まり場のミルレス宿屋は一面草だらけになってしまった。
彼らにかかれば何でも遊びになってしまう。だが、もう私もこの空気を楽しんでいた。
人とは環境で大きく変わってしまうものなのだと、いまさらながらに思う。

7-4:一瞬だけの結婚生活

 いつもはMC1だの2でカオスな狩を楽しむ面々だが、今回は吟で遊ぶと言う目的があったため突撃先はMC4だった。
当時、アホがメタモを沸かせてMC4がカオスになることがよくあった。
私たちが行った時も当然のようにマップは足の踏み場もないほどにメタモが湧いていた。
ところが、彼らは逃げることはない。メンバーは修、騎、賊そしておにゃのこである。
養殖大PTであれば古人数でも全滅するような凄惨な光景だが、彼らにとっては戦場は遊園地のようなものである。
カムフラジュを使っで潜入したのだが、修と騎士は待ちきれないと言わんばかりに殴り始めてしまう。
吟の姉ちゃんもそれにすぐ反応してスローをかけバトソン、サポセフと、養殖の一環のようにおっぱじめてしまう。
状況が安定してくると、詩人がマップの奥へと走っていった。

「奥でやろうぜww」

戻ってきた彼女はメタモが詰まる奥での狩を提案。誰も反対する者はおらず、
それどころか前衛どもは突っ込んでいった。あまりに激しい狩のはずなのだが、
誰も逃げようとはしない。安定したつまらない狩などこのギルドは望んでいないのだ。
ところが、そんなギルドばかりではないので、後から来たPTがメタモを沸かせている犯人と間違えて抗議に来てしまう、

「迷惑なのでやめてもらえませんか?」

確認もせずこんなことをいう奴にも問題にありだが、言い返し方もまたキツかった。

「沸かせたのはおれたちじゃねーよカス」
「剥がさずにいれば同じだと思いますが?」

売り言葉に買い言葉になっていくが、もうギルドの連中は無視だ。
言葉が通じない相手と分かって向こうは撤退していったがこのギルドは怖い。やられたらやり返す。
倍返しとはまさに彼らのことである。ギルチャでもなくノーマルチャットで作戦会議が始まる。

「カチーン」

突然怒り出した詩人はキングスマイルにミュージックコントロールをかけ、
なんと下のほうにいたPTへ放り込んだのである。この時はさすがに血の気が退いたが、
もはや名の通った連中である。躊躇いなど何もない。
結局こんな感じで毎日いろいろな意味でカオスな狩をしてすぐに吟遊詩人となった。
スパルタは厳しかったが彼女のおかげで詩人と言う職業が後々まで世話になるプレイアブルキャラクターとなった。

 ある日、コンフ禁止の縛りに括り付けられたMC1でのペア狩りを終え、
カレワラに戻ると一人の戦士が薬屋の前にいた。私が彼の傍で回復薬を調達していた時だ。

「いい戦士がいるお」

また詩人が絡みだした。だが、もう慣れっこのなので私も絡みだしている。
しかし、今日の彼女はかなりテンションが高く、私の予想を遙かに超えた一言を戦士さんに投げつけた。

「痛いIDのせいで結婚できないカワイソスな詩人がいるんだお」

どう考えても私のことである。それに加えて彼女は「でもかわゆすなんだお、バージンなんだお」と付け加えていく。
明らかに戦士を逃がさないように周りを囲み、ついに私と彼は結婚することになってしまった。
彼は翌日から二度とログインすることはなかった・・・。それはきっと、痛いIDの詩人が相手だったからだろう。
おまけに、おにゃのこが掲げていた戦闘ギルド名も香ばしすぎて一般人ならまず近寄らない名前だった。その名も「カス」。

7-5:堕ちた盗賊

 しばらく吟遊詩人で遊んでいた・・・というよりスパルタを受けて少しは上達し、
カス吟からゴミ吟へ昇格の称号を師匠である詩人から賜った頃、何がきっかけだったか忘れたが
ふいに昔の話を出してしまい、ファーストを見せろいう話になってしまった。
これがファーストだと言いきろうかと思ったが、もうこの時の私は完全に戦闘ギルド「カス」の一員として
自由人の限りを尽くしていたため、晒しなどどこ吹く風の状態だった。

― ま、こいつらなら言っても何にもないだろう

そんな気持ちになってついに封印から解いて彼らの前に姿を現すことになった。
正直、ドキドキものだった。どんなことになってしまうのだろう。
気の置けない連中相手でもこんなに緊張するのは初めてのことだったかもしれない。

「おめーシャニーだったのかおwww」

晒しも遊びで覗き、祭を起こそうと燃料を投下することさえある彼らはもちろんシャニーを知っていた。
だが、誰も正体を知ったからと言って態度を変える者はいなかったし、
むしろこの時からさらに彼らと親交が深まった気がする。
最後はスカイプをしながら遊ぶ仲にまでなった彼女らから言われた言葉は今も覚えている。

― おれはシャニーがどんな奴か知ってるお。
おめーなんか悪いことしたのか?
何もしてないなら、堂々としてりゃいいじゃない
それでも気になるなら言えお。おれできる子だからな

その日からシャニーが再びマイソシアを歩き出すことになった。
するとすぐに晒しに名前が挙がったが、もう気にすることはしなかった。
身内でさえも燃料を投下してきたとわざと書き込んだりしたこともあったが、
不思議なことに以前のように炎上することもなく、気づけば善の盗賊だったはずのシャニーは悪賊へと堕ちて、
カスの連中と共に天上界や異次元などを駆けることになった。それまでとはまるで違う感覚。
相棒が戻ってきた喜びと、どこでも遊びに行ける仲間の存在と。
あの頃がMMOとしてのアスガルドを謳歌していた一つの時期だったことは間違いない。
福島地震によるサーバー閉鎖を機に接点がなくなってしまったが、
今頃彼らは何をしているのだろう。もしももう一度逢えたなら、ありがとうと伝えたい人たちであることは間違いない。
2015-07-07 00:05 | カテゴリ:タイ赴任記
7月はタイは雨期に入り、バケツをひっくり返したような雨が降ります。
とは言え、今年はかなり雨の降る地域に偏りがあり、各地のダムが悲鳴を上げています。
政府も節水を呼び掛けて何とか凌ごうとしている状況。
主要なダムの貯水量が22%だとか18%とか、下手すると8%とかいうダムまで。
水道代の値上げや、ダム貯水に頼る水力発電量の低下に伴う電気代値上げがなければいいが。。

IMG_2053.jpg

会社の周りでもどしゃ降りになる日があります。
地面を雨が叩く音が凄まじく、本気で前が見えなくなるほどの雨が降ります。
コンクリートで覆われた車の都市バンコクはもちろん、このラヨーンもどしゃ降るとあちこちで冠水します。
工場も雨漏りしてろくなことがありませんが、休みの日のどしゃ降りは好きだったりします。
ひんやりするし、雨も日も悪くないもんです。
※ただし、ゴルフの日を除く

私はたばこは吸いませんが、愛煙家にとっては最近の値上げは厳しいのではないでしょう?
嫌煙が進み、唯でさえ肩身の狭いうえに家計の圧迫力も年々増し・・・。
まぁ、吸わない人からすれば毎日500円なんて1か月1万5千にもなるんで、無駄遣いとしか思えないのですが。。
そんなタイでは日本よりもさらに過激にタバコは迫害されております。

IMG_1991.jpg

タバコを吸ってると生まれてくる子供がこうなりますの図。
このパッケージはまだましなほう。
下手するとタバコ吸い続けた真っ黒な生の肺の写真とかのもありますからね。

IMG_2033.jpg

今日は伊豆益ではなく一番へ行きました。
長崎ちゃんぽんがあったので怖いもの見たさで頼みましたが、かなりイイ線行ってました。
これならまたこれだけ食べに行ってもいいくらい。
下手したらリンガーハットよりもうまいかもしれない。
2015-07-06 00:05 | カテゴリ:タイ赴任記
いよいよ甲子園の地方大会も始まり、夏が近づいてまいりました。
日本でお過ごしの方々はご機嫌いかがでしょうか。
熱くて夏バテにならないようくれぐれもお気を付けください。

IMG_2045.jpg

私の秘密兵器です。日本から持ってきた自家製の梅干しです。
おかんサンキュ-!
ジムに行き前に一粒食べることにしているのですが、9割くらい忘れてそのまま行きます。
なのであまり減ってません(

さて、伊豆益の通りは本当に飲食店が多くていつか一度行ってみたいと思う場所が多いのですが
なかなか行く機会がないんですよね。一人で突撃するとなると、、多かれ少なかれ戦わないといけないので。
戦うとは、言葉が通じない中身振り手振りで注文までこぎつける一連の格闘劇のことです。
かなり体力に余裕がないと行く気にならないので、新規開拓が進みません。
その中でも最近見つけたお店。

IMG_0084.jpg

かなりカンタリー寄り、一番の方面まで伊豆益通りを走ったっ先にあるバーミーはじめ麺を提供するお店。
グーグルマップにも存在を知られておらず、店のマークすらないこの店は、
トタン屋根を載せただけのシンプルすぎる店構えで衛生面など気にするだけ無駄な見た目ですが、
中に入ると調味料に加護をかぶせてあったりと配慮されています。

IMG_2021.jpg

量は手頃。ゴールデンゴルフの帰りに行くとバーミーだけでなくガパオ・ムーも一緒に頼んでます。
それでも85バーツという破格。うまくて安いローカルもよく来て席が埋まっているお店です。
どうやらタイ人は夜にバーミーを食べないらしく、この店も例にもれず18時に閉店してしまうので
平日の仕事帰りにつかえないのが残念です。
2015-07-05 18:32 | カテゴリ:タイ赴任記
今日も毎週通っているゴルフの打ちっぱなしに行ってきました。

IMG_0083.jpg

Golden Golf & Sports Clubです。
最初にチケットを買う必要があります。1綴り何枚だったか忘れましたが、1200バーツです。
枚数がかなりあって、チケットの1枚で35球なので日本の打ちっぱなしよりかなりお値打ち感があります。
今日もひたすら7番と5番を練習。どうしても左足が浮いてしまうのでバラついてしまいます。
これさえ治れば結構いい感じなんだけど・・・。ドライバー?知らぬ。

IMG_2085.jpg

打ちっぱなしで会社の方に会ったのでその足でセンタンラヨンに行くことになりました。
やっぱりできてまだ2か月たっていないのですごくきれいです。

IMG_2086.jpgIMG_2087.jpg

ですが、すでに中は普通に歩けるくらいの人の流れになっていました。
下手したらレムトンより人口密度的には低いかもしれないくらいでした。
このくらいがある程度の賑わいを感じられ、買い物もしやすい密度なのでちょうどいい感じです。
ただ、2か月でこれだと半年後どうなっているか・・・。
でも、飲食街は結構人が入っていましたよ。順番待ちの店もあちこちありました。
私たちは丸亀製麺へ。

IMG_2089.jpg

“今は”まだ食べれる味らしいです。
私はご当地メニューともいえるトムヤンうどんをいただきました。
日本でトムヤンクンヌードルなるものを食べましたが、やはり本場モンはおいしかったです。
2015-07-05 17:50 | カテゴリ:ねっと・げーむ
6-1:崩れた理想郷

 勝手に傷心して立ち直れない状態であったが、それでもアスガルドから離れることはなかった。
人知れず別キャラを作り、活動を再開させていたのだ。
やはり作ったのは盗賊だった。もはや盗賊しか知らないのではないかと思うほどに
その選択をするのに迷う時間はなかった。ただ、これまでと違う決定的なことは、
性別が男だったということである。要らぬストーキングを避けるためだった。
無名の盗賊としてまた一から活動を開始した私の中では緊張がすっかり消えていた。
もう、人目を気にする必要もない、WISに怯えることもない。
何とも下らない解放感から、初心者時代を楽しんでいたが、明らかにその面白さは
シャニーと共に過ごしていた時とは比べ物にならないくらい落ちていた。
今までできていたことが突然できなくなったというのもあるかもしれない
。だが一番の理由は恐らく、序盤のマップにあまり人がいなかったからだと思う。
オルタナティブプロジェクトがもたらした地殻変動によるマップの整理が行われて以降
初めてのフィールドマップでの狩。もはやナイトモスマップは存在せず、
その代わりになるような初心者のコミュニティを創りだせる狩場も見当たらなかった。
雑魚一匹当たりの経験値量はざっと10倍程度になっていたと思う。
体力はない、クリティカルが出やすい防御力もない・・・だけど経験値は10倍。
コミュニティが形成される前にどんどん先の狩場へ行ってしまう環境だったのだ。
何より、そのころからだったと思う。課金による支援守護動物が実装されたのは。
支援守護動物とは、育成の必要はあるが主人の体力やスタミナ、
そしてマナを自動で回復させてくれるペットのようなものだ。前衛はソロ狩りに拍車がかかり後衛は余る時代。
もともとソロ活動ができた魔術師だけでなく、聖職者もドロイカンでのアンデット狩をするものが増えた。
それらができるようになるまでのいわゆる序盤は面倒な時期とさえ映り始め、
この頃にはモンスターキャッスルを用いた低レベルの育成・・・養殖と言ったことも普通に行われ始めていた。
惰性だったのだろう。特に面白いわけでもなく、序盤をフィールドマップで黙々ソロをし続けた。
人のいないサラセン森で爆弾を投げまくって50ヘルも数時間で抜けてしまった。
この時は完全に作業だった気がする。どのモンスターもでくの坊。
これでは、序盤をスキップしたくなるし養殖業はさぞ儲かったことだろう。

6-2;我、唯只管に芥を拾ふ

 ゴミ拾いとは言っても汚れた世の中を掃除する正義の味方になろうなんて立派な話ではない。
むしろ逆の立場を生きた時代の話である。序盤の狩場はとにかく難易度が低く、
まともな装備がなくともかなりのスピードで成長していった。
50ヘルを抜けてもある程度まではそれなりにやっていくことができた。
ディグバンカー最下層は何とも偉大な狩場である。しかし、それも70レベルに近づくにつれ
どんどん厳しい状況へと変わっていった。序盤だけちょろちょろ変えるもんだから、
変え終わりからのバランスと難易度の変化はとにかくめちゃくちゃだ。
これはマビノギでも同じことが言えたから、おそらくネクソン自体がバランス調整がヘタクソなのだと思う。
シャニーを封印したときはお金も装備も何も移動させなかったものだから一文無しからのスタートだ。
装備はすっかすかで夜を越すような銭の余裕はない。
しかし、迫りつつある要塞籠りを前に何とか装備を整えようと考えてみる。
しかし、今までの金策はどれもある程度のスキルレベルがあったからこそ成り立つようなものばかり。
めった刺しも覚えていないような盗賊ができる金策などありはしなかった。
ところが、私はあるはずのない金策を見つけてしまったのである。ヒントはある聖職者から依頼された鑑定だった。

「いっぱいありますね。ウェイトぎりぎりです」

ほぼインベいっぱいに受け取った依頼品を一つ一つ鑑定しながら戦利品の多さに感嘆を漏らす。

「ドロイカンはドロップが多いですから。持ち切れずに捨てることもあるんですよ」

ヒールアタックによるドロイカン狩りが聖職者の中で大流行した時代。
一気に大量のモンスターを巻き込んで狩ることができるので経験値効率はかなりよかったはずだ。
おまけにドロイカンたちのアイテムドロップ率は上々で、この聖職者のように戦利品が溢れることもざらにあった。
・・・戦利品が溢れる。閃いてしまった。察しの良い人ならもうお分かりかもしれないが、
考え付いた金策とはドロイカンマップに落ちている未鑑定品を拾い集め店売りすることだった。
まさに乞食、底辺である。時は夏休み、甲子園を見ながら暇さえあればドロイカンマップを駆けまくり、
ゴミを拾っては店に売りを繰り返し、繰り返し続けた。バカにしてはいけない。たかがゴミとは言え、
あの時のドロイカンマップの人口密度は恐ろしいほど高く、落ちているアイテムの数も尋常ではなかった。
おかげで、ゴミ拾いだけで何億と言う金を集めることができたのである。
キャラもフレンドも捨てて失うものは何もない状態では、手段に制限などあるわけもなかったわけだ。

6-3:盗賊以外に食指を伸ばす

 だが、そこまでやっても盗賊に以前の熱は入ってこなかった。
確かに集めた金で装備は整った。レベルさえあげればまた海賊要塞でスキル習練が待っている。
やはり相棒を失ったショックが大きかったのか、ぶらぶらするばかりで狩場に出てレベリングをしようと思えなかった。
だいぶ長い間ログインしなかったり、ログインしても何もせず裏で別のことをしていた時期が長かった。
フレンドに何の連絡もせず消息を絶ち、会話する相手がいなかったのも理由の一つかもしれない。
そんなとき、ある日ふと思ったのだ。これはきっと盗賊に飽きたのだと。
妙に別職をやってみたくなり、キャラ作成画面へ。晩年こそ最強と言われた修道士も、
当時PTに参加できないほど弱い茨の道と言われていた冷遇職だった。ソロ活動ができ、ある程度戦える。
消去法的に戦士か魔術師となったが装備の関係上、もうゴミ拾いも良い加減飽きていたので
盗賊の装備を転用できる戦士を作ることにした。プレイし始めて最初に感じたことは・・・足が遅いことであった。
当たり前と言えばそれまでなのだが、盗賊ばかりやっていた影響でブリズウイクが標準の移動速度となってしまい、
おっぱいを揺らし腰を振ってノンたら歩く姿はどうにもイライラさせられた。
すぐに速度ポーションに手が伸びたが、それでも遅い。
まるで通勤時に前をスズキのエルフに塞がれたかのような感覚は最後まで慣れることはなかった。
しかし、狩場でのスムーズさは戦士のほうが圧倒的だった。序盤からひたすらルナスラッシュを連打するだけでいい。
フレイムスラッシュなど無視してルナスラだけでツバメ返しまで来たが、どうにものめり込んでいる感じはなかった。
61服を着て斧スキルを使うとパンチラするぜーくらいしか変化点もなく、
だらだら続けているうちにレベル80になってしまった。すると、ある日突然思いついたかのように
騎士転職セットを買い騎士へと転職。初期ボーナス以外全STRだったが、
盗賊の装備だったので結局DEX寄りのバランス型になった。騎士の防御力はばつ牛ゥンで
盗賊では痛すぎたくるみ割りゾーンも被ダメ1。さすが黄金の鉄の塊は革装備のジョブに後れを取るはずもなかった。
しかし、ライトニングスピア習得のために籠ったくるみでブラストアッシュを65まで上げたところで
燃え尽き症候群を発症してしまい、ある日突然やらなくなってしまう。
私はいつもそうだ、やるときはある日突然に、止める時もその日急に。またしばらく何もしない日が続いた。

6-4:第三の盗賊

 MMOは遊び相手がいないとどれだけ長続きしないのだろうか。
人それぞれだと思うし、ゲーム内での人との接し方も千差万別だが、
やはりチャットもないとなると飽きはかなり早い。忌まわしき事件から1年が過ぎたころ、
私は再びブリズウイクで駆け抜けていた。やっぱり、盗賊に戻ってきてしまうのである。
おまけに今度は女の子だった。不思議なモンである、男賊だとあれだけやる気が出なかったのが嘘のよう。
アスガルドを始めるとき女性キャラを選んだ影響か、ゲームは女の子でやるもんだという妙なポリシーができていた。
実際、着せ替えは女の子のほうが楽しいし幅もある。これはアスガルドにかかわらず
ほとんどのゲームに言えることだった。マビノギしかり、ECOしかり・・・。
緑色の長髪を風に流して走りふれあい広場へと向かう。どこに行こうとしていたかは忘れたが、
確かゲートを買いに走っていた記憶がある。ふれあい広場に着き、薬屋まで一気に駆け抜けようとした時、
聖職者とすれ違った。いつもなら素通りするのだが、その時はたまたま相手の名前を確認し、
心臓が飛び出しそうになった。それはアスガルドで最初にフレンドとなった聖さんだったのである。
一瞬迷ったが、私はすぐに声をかけた。いきなり初対面の人に名前を呼ばれたのだ、
相手が驚き戸惑ったのは言うまでもない。だが、正体を明かすとすぐに以前のように穏やかな時間が戻ってきた。
今までの経緯と突然消息を絶ったことを詫びたが、彼女は私に起きたことを知っており、
あれでは仕方がないと言ってくれた。その日から、ちょくちょく懐かしい場所に戻ることになったが、
ついつい彼女たちが口にする私の愛称にドキっとすることもあった。
誰かに聞かれていたら大変なことになるかもしれなかったが、幸い当時のミルレスは屋外は人は少なかった。
それからは雑談をしている時間が増えたし、ソロ活動は減っていった。
かつての穏やかな時間を取り戻したかに思えたのだが、楽しい時間ほどあっという間に過ぎてしまうもの。
またしても別れの時が近づいている。出逢いがあれば別れは必ず訪れるものだが、
人はすぐにはそれを受け入れらないから困った生き物である。

6-5:別れと旅立ち

 ちょくちょく、溜まり場に知らない戦士が来るようになっていた。
顔を合わす機会が多かったのですぐに会話する仲となったが、
たまり場に私しかいないと開口一番に彼が口にするのはいつもあの聖さんはいないかだった。
私がイエスと返そうとノーと答えようと、結局彼女が来るまで待っているわけだが、
彼女にもついに固定さんができたんだなと、かつて自分が聖をやっていた時代を思い出した。
もう、ベータ時代からの知り合いはほとんど引退してしまった。
今更野良PTなど恐ろしく参加できない状態では、もう二度と後衛をプレイすることはないだろうと思っていると
彼女がログインしてきて二人で遊びに出かけて行った。
気の置ける知り合いがいるとはなんと素晴らしいことかと、しみじみと感じる。

 ある日、聖さんのほうが先にログインしてきて相方を待っている間雑談をしていた。
聞くとリアルでも繋がりがあり、別会社ながら偶然仕事相手になっているらしい。
事実は小説より奇なりと言うが、まさにそんな感じであり世の中狭いものだと思わされた瞬間であった。
だが、そんなことなど驚きのほんのプレリュードに過ぎないものだと、この時は思うはずもない。
戦士さんがログインしてくると彼の横にぴったりとくっつく。
何とも仲のよさを醸し出す二人は突然にカミングアウトを始めた。

「わたしたち、来月結婚します」

最初はアスガルドの中での結婚かと思ったが、
来月・・・その言葉にそんなチャチなレベルの話ではないことをすぐに察した。
その言葉通り、二人は結婚しそれを区切りに引退していったのである。
寿退社ならぬ寿引退とはなかなか聞かないことではないがおめでたいことに変わりはない。
精いっぱい祝福してやり、そして別れを告げた。
この瞬間、私はゲーム内で誰一人として親友がいなくなってしまった。
誰も来ない溜まり場でぼうっと過ごす日々が続く。
何でもそうだが、変化がないものなど何もない。だが、変化は常に人を進化させ、
どんな変化も1年後には何でもない日常となっているものだ。
私の場合も、別れはまた新たな出会いへのスタートラインに立った瞬間であった。
ここまでが、私のアスガルド生活の前編といったところである。
2015-07-02 08:53 | カテゴリ:ねっと・げーむ
5-1:インビジブル事件

 レベルが91になっても天上ダンジョンで遊ぶことはしなかった。
当時は支援守護動物もいなかったのでソロでの活動は絶望的な場所だったからだ。
もっぱら盗賊の時はソロ活動ばかりになっていた私にとって、
ソロができない環境はどれだけ魅力的なマップでも存在しないも同然だった。
天上界は雲の上の存在たちが暮らす場所だと割り切って私は地上レベルを上げることに勤しんでいた。
勤しむとはいっても、毎回行く場所は同じだ。今日も日課のごとく樽を叩いていた時である。
突然にかつて聖時代に固定だった騎士から連絡が飛び込んできた。

「お前、晒されてるぞ!」

最初は一体何を言われているのかよく分からなかったが、
彼の語調から何か良くないことが起きているのだろうという予感がわっと腹の中に重く淀みだす。
詳しい話を聞くと、どうやら2ちゃんねるの晒しスレに名前が挙がっているとのこと。
今思えば、晒しスレに名前が出ることなどふーん、そう。また跳ね返りか。で終わるレベルなのだが、
当時の私は初心なもので、何か良くないことをしてしまったのかと自分の行動を振り返った。
しかし、思い当たることもなく、騎士に聞いた内容は当然のことだった。

「どんな内容で名前出てるの?」
「いやなんかインビジで他のキャラの与ダメを見て晒してるとか」

とにかく、自分の目で確かめてみろとスレッドのアドレスを教えてもらい見てみることにした。
すると、最近海賊要塞で狩りをしていると名前とカメへの与ダメが載ったSSが
晒し用の画像掲示板にアップされているらしい。で、その犯人として名前が
挙がっていたのが私のキャラ、シャニーだったのである。確かにインビジブルはよく使っていたが、
それは海賊要塞4から海賊要塞店に戻るとき、精神安定剤を消費したくなかったからのはずだった。
一体どうしてこんなことになってしまったのか、しばらく頭が真っ白になってゲームに戻ることができなかった。
絶対反論の書き込みはするなと言われていたので堪えたが、
その瞬間から何か違う世界にでも着てしまったかのようにアスガルドの中での行動が変わってしまった。
とにかく、目立たないようにしよう。何か行動を起こすときはまずそれが頭をよぎるようになってしまった。
いつも、誰かに見られている気がする。誰が晒し人なのか分からない。
この瞬間も狙われているかもしれない・・・。
見えない相手に恐怖を抱き、交友を広げようと思うことなど、全く無くなっていた。

5-2:無リビ事件

 それでもアスガルドをやめる気にならなかったあたり、
相当あの頃はアスガルドにハマっていたのだろう。言いたい奴には言わせておけ、
それがネットゲームをする上での心得かもしれない。不必要に反応すれば相手の思う壺だし、
何より愉快犯を創りだして二次、三次被害を生むからだ。本当に怖い奴なら直接やってくる。
間接的にしかできない相手は無視するに限る。鉄則のはずだが、
そんなことに気付いたのははるか先のことだった。
晒しスレが盛り上がるよう、盛り上がるように反応してしまった私への突撃はエスカレートしていくばかりであった。

 ずっと、そろそろ装備をまたワンランク上げようと考えて金策を続けていた。
そしてようやくに購入できるほどの資金を調達できたのでF2に募集記事を書いた。
買おうとしていたのはニルリビエアだ。当時属性メダルの中で最上級のリビエアは
宝くじからしか手に入れることのできない言わば上級装備の一つであった。
指輪や線耳はワンランク上を目指すには億単位の鐘が必要なレベルまで向上していたので、
一番コストパフォーマンスの高い部分を強化しようと思ったのである。
記事を書き終わった後、たまり場で友達と喋っているとしばらくして売り手が現れた。
最上級装備の割に案外あっさり売買が成立してラッキーだと思ったのだが、
これがまさかとんでもない事態になろうとは。今でもはっきり覚えている。取引場所はミルレス銀行前だった。
当時は銀行への預け入れ上限が低かったため、億の取引をする時は大変だった。
私の時も、まず1億を相手に投げ、残りの金額と無リビを交換すると言う手順で取引することとなった。
この段階で、アスガルドだけでなくネトゲ経験者ならちょっと待て、と思うことだろう。
その予感は的中することになる。1億を相手に渡すと、取引相手はこう言って消えた。

「では別キャラにチェンジして、そのキャラで無リビと交換します」

言われたとおり素直に受け取って、次のキャラがミルレス銀行前に訪れるのを待った。
だが、3分、5分・・・まだかな。さすがに10分経ったところで友達が心配して迎えに来た。
ここに来て初めて気づく。いや、気づくことを避けていただけなのかもしれない。詐欺に遭ったのだと。
その後、状況の一部始終を見ていた方から何と親切にも譲っていただけたが、
ますます他人への不信感が募った出来事であったことは言うまでもない。
交友も広げられない、取引さえも躊躇う。少しずつ、追いつめられていた。

5-3:ささやきと言う名のストーカー

 それでもアスガルドをやめなかった当時の私は、今から考えると少し理解できない部分があった。
晒しを凌駕するほどアスガルドにハマっていたのか、仲間たちとの時間がそれらを忘れさせてくれたのか。
だが、そんな風に一度傷がついた場所は元に戻ることはない。
それを放置し続ければ、傷は亀裂となり、亀裂はやがて大きな断裂を生む。
晒し住人の行動は日々少しずつ、だがある日突然激しくなっていった。
最初は2ちゃんねるの中だけで騒がれた話であったし、スレッドは2ちゃんねる外に話題を持ち出し、
突撃することは禁止されていた。だが、どの世界にもルールを守れないもの、
ルールを破ることで自己顕示をしようとする跳ね返りはいるものだ。
当時晒しスレは盛況を極めると同時に無法地帯の極みと化していて、
私以外にもゲーム内で突撃を受けたものは少なくなかった。
今思えば、晒しスレなど書かれている内容は日本語でもタイ語でも大して変わらないような下らないものだが、
ここが賑やかなことはゲームに人がどれだけいるかのバロメータに使えるくらいの認識だ。
しかし、当時は晒しスレに名前が挙がる=死の宣告くらいに捉えていたかもしれない。
実際、ただ名前が出るだけならすぐ有名人の話題に差し替えられてしまうのだが、
どうやら知り合いが擁護してくれたらしい。晒しスレでの擁護は単なる燃料投下でしかない。
案の定炎上して、私自身が有名人となってしまうことになる。
一時期はアス取のコテハン、ドロマップ恒例説までささやかれた程である。
もちろん、有名人になれば晒しスレの過激派がとる行動もエスカレートしてことは言うまでもあるまい。
私の許にも毎日のようにささやきが来た。

「キミのレベ、スキレベは?」
「おい、無視すんな」

そんな感じのWISチャットがかなり長い期間続いたと思う。
ディグバンカーに行けば、そこで喋っていた中級レベル帯の二人がオープンに話している。

「おっ、あれが噂のシャニーじゃね?」
「かわいいじゃん!」

良い噂で名前が通っているなら嬉しいことだが、
彼らの言っている意味がどんなものかなどいくらなんでも分からないはずもない。
びっくりしてすぐにディグバンカー外に飛び出した私だったが、
画面が切り替わる直前、とんでもない声が聞こえてきた。

「追いかけようぜ!」

半分パニックである。ブリズウイクを詠唱すると一目散に駆け出して、
駆けながらカバンからゲートを取り出すとそのままゲートでミルレス森を後にした。

5-4:止めの一撃

 一度エスカレートし始めると、その勢いは二次関数的に膨れ上がっていく。
皆感覚がマヒし、ゲーム内に突撃することを何とも思わなくなっていったのだろう。
今までは私個人へのささやきがメインの攻撃だったため、
私が黙っていれば何事もなく済んでいくものばかりだったのだが、ある日決定的な事件が起きる。

 その日も大学の講義があった。朝一の講義だったため、露店の準備をしていつも通り家を出た。
講義が終わり家に帰ってきたのは何時ごろだっただろうか。まだ午前中だった気がする。
カバンを置き、何か売れていないかなとモニターを何気なく覗く。
露店に出していたものはすべて売れ、シャニーはぼうっと立っていたが何かおかしい。
よく見ると、彼女の周りにはたくさんのアイテムが並べられ、
明らかに露店を物色しているわけでもない人々が集まっている。
嫌な予感はしたが、その予感はチャット欄に目を移して現実のものとなる。知り合いがWISを飛ばしてきていた。

「F2見てみろ!大変なことになってるぞ!」

彼の言うとおりF2を見て目を疑った。なぜ、私の書き込みがある?
今帰ってきたばかりなのに、なぜシャニーの名前で書き込みがある・・・?
そしてその内容を見て血の気が退いた。
当時、モンスターキャッスルが人気の狩場であったが、
そこで有名人をMPKしたという犯行声明がたっぷりの煽り言葉で飾りつけられて書き込まれていたのである。
もう一度名前を確認する。

― シャニー

そんなはずはない、何かの間違いだと思って一度F2掲示板のメイン画面に戻ると、
すでに記事へのレスまでついている。一体何が起こったのか、もう一度記事の内容を確認しようとしたが、
掲示板を更新すると記事はどこにも見当たらなかった。
レスだけが残り、あれが悪夢と言う名の現実だということをこれでもかと突きつけてくる。
頭の中が真っ白になった。今でも仕組みはよく分からないままだが、
他サーバーで同名を作り、他サーバーの掲示板に書き込むことができるバグを使用した手口であったらしい。
だが、そんなものは証明する手立てがない。
たった今、シャニーは悪人という逃れられない烙印を世界中から捺されたのだ。

 それだけでは済まなかった。F2掲示板にはほかにもバグがあり、
一度F2掲示板をあるキャラで使用した後別キャラにチェンジして書き込んでも、
最初のキャラIDで書き込みが登録されるというものもあった。
今回の事件を皆は私がサブで犯行を実行し書き込みをしたつもりがメインのシャニーの名前が掲示板に出てしまった。
だから焦って掲示板から削除したと思ったらしい。
それを覆す手段はないし、第三者から見ればその理解は自然だった。
決定的な材料が出たことで、晒し住人達が攻勢を仕掛けてきた。

「もうここまで酷い人なんていないよ?」
「バレちゃったんだし、引退するしかないだろ」

そんなWISが来て、どう反応したらいいか分からなかった。
どうせ反論したところで説得力もない。だが、何も言わなければ認めることになる。
違うとしか答える言葉がなかったが、ついに私の限界を超える一言が突きつけられてしまった。

「潔く引退しなければお前の仲間に同様の報復を行う」

もうこれ以上は黙ってはいられない。私は決心することにした。

5-5:封印

 黙って引き下がるつもりはない。勝ち目はないと分かってはいるが、何もせずにいるわけにはいかない。
このままでは私の仲間に被害が及ぶことは優に想像できた。
私はついに敵地に乗り込んだ。証拠にもならないことをあれこれ並べ、自分は何もしていないと主張した。
当然祭りが起きて次から次へと燃料が投下されていく。
彼らの困ったところは、私がどんな悪さをしたから晒されることになったのか、誰も根拠を言わないことである。
理由は確かに言う、インビジウォッチから始まりMPK騒ぎに至る部分を指摘はするものの、
証拠の部分についてはまったくのお互い様の状態である。
誰かが言ったから、過去スレに書いてあったから。汚い連中である、
できるだけ自分の責任にならないよう、ならないように話を進めようとしているのが見え見えだった。
誰かが言った。~らしい、~に決まっている。そうだそうだと煽るスネオばかり。
そんな話しか出てこないのでついに提案した。

― ゲーム内でケリをつけよう、メインでスオミまで来い

結果は実に下らないものだった。来たのはたった一人だけだったのだ。
あとは様子を見にインビジウォッチでもしていた連中はいたかもしれないが、
あれだけ威勢の良かった連中はだれ一人として姿を見せることはなかった。
この時気づいた。晒しスレにいるような連中の相手をするなどバカのすることなのだと。
今思えば、負け犬どもがずいぶんと跳ね返っていたものだと思うが、あの頃は間違いなく負け犬はこちら側だった。
あまりにも高い授業料となったが、私は晒しスレに突撃した時点でもう決心していた。
最後までスオミ町で待ち続けたが、ついに私はログアウトすることにした。
もう、このキャラでマイソシアを動き回ることはないだろう。
思い出と信じられない現実が交差しながらログアウトボタンを押した。

 今も晒しスレに困っている人にアドバイスを贈りたい。
ゲーム内で面と向かって言えないようなガキんちょの相手をする暇があったら、
自分の行動を省みることだ。気の置けない親友に自分の悪いところを聞いてみることだ。
何も思い当たることがないのなら、堂々としていればいい。
ハイエナは弱りしゃがみ込んだところを狙っている。
2015-07-01 08:49 | カテゴリ:ねっと・げーむ
4-1:初心

 シャニーと共に一からのふりだしに戻った私だったが、そこには作業感と言うものは全くなかった。
ひたすら道を求めてレベルアップにいそしむ毎日では、
初心者の頃毎日訪れていたはずの場所をすっかり忘れてしまっていた。
シャニーとまたそれらを巡ることで、改めてこんなのんびりできる環境もあるのだと実感することができた。
ルアスのナイトモスマップは相変わらずたくさんの人がいて、
駆け出しの冒険者たちが必死になってモスやタイド退治をしていた。
ジャイアントキキが現れようものならもうその場はお祭り騒ぎだ。その場ですぐフル人数PTが出来上がり、
みんなで死ぬ気で戦いを挑んだものである。そんな中、シャニーは実に順調に成長していった。
メイヴェルの時の苦労が嘘かのようにさくさくとモンスターを倒していく姿は頼もしいものがあった。
当然だろう、彼女はセカンドキャラである。何もかもが手さぐりで、何も持っていなかったメイヴェルとは環境が違う。
知識がある、そして何よりある程度の装備がある。この時くらいからだろうか、
装備の大事さを頭の隅で感じ始めたのは。世の中は火山の実装でハーフブーツなどの
DEX向上装備が出回り始めたが、一般庶民には到底手の届かないものだった。
いつか必ず装備を整えよう、指輪のレベルアップが急務だと考えていたが、
今はとりあえずレベルをあげて要塞に行こう。それだけに絞ることにした。
おそらく、メイヴェルの時より10レベルくらい若い段階で次の難度のダンジョンに籠っていたと思う。
もちろん回復薬はがぶ飲みだったが、使ってなんぼと危険な場所でも構わず突っ込んだ。
この向う見ずなところは恐る恐る次へと踏み込んでいたメイヴェルとの一番の違いだと思う。
あっという間に50ヘルを抜け、ブリズウイクも覚えた時、やはり序盤は良いものだと思った。
後半になるとどうしてもソロや効率を求めるPTが増え、序盤のようなたくさんの人はいるけど
みんなのんびりやっているという環境は少なくなっていく。個人的には序盤がダメなゲームに人はいつかないと思う。
よく新規獲得のために序盤をすっ飛ばすキャンペーンをするMMOがあるが、あれは愚策以外の何物でもない。
ゼルダの生みの親、宮本茂氏も言っている。ゲームの作り込みで最も神経を使うのは序盤だと。
序盤の内にユーザーを世界観に引き込み、もっと先を見たいと思わせるものがなければ居つくことはない。
あの頃のアスガルドは、序盤にも魅力がたくさんあった。

4-2:要塞へ

 意外とあっさりレベル65になった。かなり早かったと思うが、その分PTプレイでバカをやる時間は大きく減っていたと思う。
潜入服を着込んで盗賊らしくなったシャニーの手には海賊要塞への入場チケットが握られていた。
メイヴェルの時はかなり遅いスタートとなったが、今回はここから頑張ろうと意気込む。
エリスに籠り指輪を強化しながらのレベリングのおかげでDEXもレベル65の時点ですでにメイヴェルを大きく上回る。
これならいける、そう確信をもって海賊要塞の最奥まで一気に駆け抜けた。
CON振りは大きく下げて7振り程度だったと思う。これでも最後の完成形の賊に比べれば少ないのだが、
やはり22振りから7振りへの変化は大きかった。HPが低いのはもちろん、
SPが低いためモス酒がシュワシュワと消えていく。当時のめった刺しは消費SP60というトンデモスキルだったので
お金はどんどんなくなっていったが、いずれ狩で取り返すと意気込みひたすらカメにダガーを突き刺し続けた。
70ヘルになるころにはめった刺しのスキルレベルも50を超えてきて、
なんとメイヴェルではあんなに苦戦した船長を倒してしまったのである。よく頑張ったな、お前!と
我がキャラながら未だ駆け出しの潜入服のままで先輩を追い抜いたシャニーを褒めてやった。
71服を着ると、もう海賊要塞5は狭く感じるようになってきて、いつも素通りするだけの海賊要塞4に行ってみることにした。
ここは通称“樽”がたくさんいる場所で、見た目はどうにも腑抜けた連中なのだがその実力はなかなかのものだった。
オルタナティブプロジェクト以前はとにかくクリティカルを出しにくい相手で、
シャニーもまたかなりのノンクリを出しながらタイマンがようやくのところだった。
おまけにカメとは比べ物にならない被弾率と被ダメはちょっと囲まれたりラグったりすればあっという間に昇天できる環境。
しかし、そこに痺れた。今度はこのマップを楽々狩れるようになってやる。その思いだけで広大な砂浜を駆け抜けていった。
これが後に樽基地外とさえ言われるほど通い詰めたシャニーの第一歩だった。
賊_61服


4-3:装備の充実

 要塞に籠り始めた時はとにかく消費ばかりが膨らんで大赤字が続いていた。
メイヴェルやチコリーが細々貯めてきたお金を湯水のように使い、銀行残高は墜落を続けている。
このままではすぐに資金が枯渇すると言った状態まで一度は落ちたのだが、私は焦らなかった。
メイヴェルの時はかなり焦った。ドロイカンマップに落ちているアイテムを拾って鑑定し資金にした時期さえあった。
だが、メイヴェルで培った経験は私をそのまま海賊用差に引き留めた。
スキルが鍛えられてくればいずれ黒字に転じてくることを知っていたからだ。
予想通り、スキルが55を迎えた辺りから微益となってきた。
そしてさらに、樽に狩場をシフトしたことでさらに利率が上がってきた。
何せ当時、カメは人が多かったが樽はほとんどいなかった。ミミックは叩きたい放題だったし、
樽はドロップ金貨だけでなく名声もおいしく購入費を抑えることができる環境だった。
おまけに、彼らはそれなりの額で売れるスペルブックを落としてくれるため、ミミックが外れでも黒字。
ミミックからいいものが出ればほくほくと言った感じで、スキルを鍛えながら金策もできると言う
願ったり叶ったりの狩場だったのである。それはレベル75となり鉄のムチを習得してからの赤字期間を
補って優に余りあるほどの資金をもたらした。金があるともちろん、使ってしまいたくなるのが人の性と言うものだ。
最低限の予備予算だけ残し、ありったけを装備の強化につぎ込んでいった。
この時、どうにも悪いくせが身についた気がする。装備は自作ではなく完成品を買うものだ、というものだ。
この考えを治すのにだいぶ時間がかかった気がする。しかし、おかげで大分装備を整えることができた。
指輪に戦耳にハーフブーツに。その甲斐あってか、樽でのクリ率は上々のものになっていき、
いつしか樽にも全クリが目標となっていった。この時からか、装備の重要性を強く感じるようになったし、
スキルレベルだけではなく装備を強化することへの楽しみを覚えたのは。
すべてが順調に思えたし、めきめき腕を上げていく相棒の姿を見るのがとても楽しい時期でもあった。
もっと強く、もっと高みへ。その思いが私を海賊要塞に幽閉し、
以後91になるまでの大半の時間をこの要塞で過ごすことになる。
だが、同時に様々な大きな変化の時までもうあまり時間のない時期でもあった。
その一つは、すぐに訪れて全ての冒険者を飲み込むこととなる。

4-4:オルタナティブプロジェクト

 あの頃はアップデートも多かったし、スタッフの部屋なる場所から様々な情報発信もされていた。
ファンサイトも多数存在し、中でもアスガルドファンとアス取引局は知らない人はいないくらい
ゲーム内で知れ渡ったサイトだった。公式サイトにコミュニティがない分、こうしたファンサイトでのコミュニティは大いに栄え、
いわゆるコテハンもゲームに関する雑談や質問に答えるもの、ただひたすら雑談ばかりするもの。
2chのノリをそのまま持ってきて煽り煽られを繰り返し荒らすものなど多種多彩な書き込みが毎日繰り返されていた。
アス取が栄えていた時代が、アスガルドの全盛期だったのではないだろうか。
こんな毎日が、これからも続いていく。衰退するなど、考えたこともなかった。
そんな時に突然訪れたアップデートがオルタナティブプロジェクトであった。
プロジェクトがもたらした“地殻変動”はベータ時代からの思い出がたっぷりと詰まったマイソシアのあちこちを
無残にも飲み込んで掻き消してしまった。数えたらきりがない。
初心者の頃迷いながら歩き回ったミルレスの西地区、東地区。大勢で挑み、
道中でププロブに囲まれ死ぬこともあったスオミ南東出口から続くポンポンマップ、スオミダンジョン・・・
ルアスだって最初はポータルで区切られていたのだ。そして、ノカン村はごっそりとなくなり、跡形もなくなった。
多くの初心者が集ったノカン村は飲み込まれ、ディグバンカーからもノカンは消えた。迷路は単調な一本道となり、
大空洞には人っ子一人いなくなってしまったのである。
今でもあのプロジェクトが失敗だったと思う人は私だけではないはずだ。
しかしこれがアップデートの代償と言うのならば仕方がないと思うしかない。
当然、この地殻変動についていけないものがまたマイソシアを去っていった。
私はそのまま残る選択をしたわけだが、それもそのはずだった。
私が住処としている海賊要塞には一切の変更が加えられなかったからだ。
強いて言えば、クリティカル係数が変更となり、樽相手に全クリが実現したことだろうか。
スキルレベルを上げての結果ではなく、仕様変更による目標達成はどこか白けさせてくれたものだが
それでも私は海賊要塞に籠り続けた。樽ならもっと早く倒せるように、船長へも全クリを。それが今度の目標となった。
確かこの頃からだったと思う。盗賊の指定型ハイドスキル、カムフラジュが実装されたのは。
特に情報を仕入れることもなく、毎日黙々と樽を叩いていた私にとってこれほどの金策手段はなかったことは言うまでもない。
blog_import_5115e13af2017_201507010848488e7.jpg


4-5:善悪の決定

 常に時代の先端を駆け抜ける廃人層がすでに天上ダンジョンで活動し始めていた頃、
ようやくに私もウィンターアンタゴンを作成して氷の城に乗り込むようになっていた。
しかし、紙装甲、ことのほか当時は魔法防御を向上させる手段に乏しかった鞭賊にとって
グランドパイスが出現するベリア以降の部屋は常に死と隣り合わせだった。
火力は狩れるほどの確保はできていたがとにかく物量で攻めてくる相手に押し潰されたことが何度あったか。
とは言え、実は氷の城でのレベリングはそこまで長くはなかった。
マジックホブリックを取りに行くのと、オルガナに会いに行く程度の頻度だった。
何せ、海賊要塞に籠り続けた結果、それだけでレベルは90に達していたからだ。
残りの1レベルは仲間と一緒にビルシャなどでの釣り狩りで上げたため、そこまで苦労した記憶はない。
だが、あの頃は本当にグランドパイスが怖くて仕方なかった。
それが晩年は狩場で寝落ちしようとも翌朝ピンピンしているほどのガチムチ盗賊となってしまうとは・・・。
スキルレベルをある程度鍛え終わった後はどこへ行っても攻撃面で苦労することなく、
ついに善悪決定クエストまでこぎつける。一人の経験者以外は皆初挑戦というPT。
晩年のように守護で一気に駆け抜けてラウンドテーブルなんてインチキは使えなかったし、
グラフィックオプションの影響で本気で真っ暗な中を踏破しようとする者もいた。
亜空間にはグロッドを置き道しるべを付けてもらっているにもかかわらず皆で迷い、
亜空間を抜けるだけでも2時間くらいを要したのではないだろうか。
それでも、経験者が探しに行っている間に皆で雑談に花を咲かせ眠くとも苦痛に思った記憶はない。
そしてついに訪れた氷の女王との対決・・・!かと思いきや、当時はバグでセドナを倒しただけでクエストクリアとなり
強制送還となってしまった。それまでの待ち時間や未知との対峙への不安と興奮を考えれば不完全燃焼しそうな感じだが、
その時の私はとにかくクエストが終わってほっとした気持ちばかりで神官巡りを始めていた。
あからさまな選択肢は天邪鬼にならないと悪には所属できないのではないかと思うほど。
案の定、選択の結果善の道を歩むことになったが何も実感はなかった。装備など、何も持っていなかったからだ。
そのときすでに時間は朝5時。それでも私はアスガルドマーケットへ行き、露店を漁った。
・・・漁るまでもない、あちこちで未解除の一次装備が売られていた。さっそく盗賊の服を着てみる。
それまでのボディラインを強調するような潜入服とは打って変わった白の服は気持ちを新鮮にさせてくれたが、
この時は別れの時が近づいていることなど、知る由もなかった。
賊_天上1次服